成人向け漫画(一般的に「エロ漫画」と呼ばれる分野)の歴史について、可能な限り健全な視点で概説します。
この分野の歴史は、日本の戦後の出版文化や表現規制の変遷と深く関わっています。
※この文章は無料エロ漫画同人まとめ様から寄稿していただきました。
1. 創成期(戦後~1960年代):雑誌の一角として
- カストリ雑誌と低俗週刊誌の時代:戦後すぐの混乱期に出版された、安価な大衆娯楽雑誌「カストリ雑誌」や、1950年代から台頭した「低俗週刊誌」が、この分野のルーツとされています。これらは、実話記事、ヌード写真、そして漫画を含む雑多な内容で構成されており、漫画はまだ雑誌全体の一部という位置づけでした。
2. 「エロ劇画」の勃興(1970年代):成人向け専門誌の誕生
- 劇画ブームの影響:1960年代後半からの「劇画」ブーム(リアルな絵柄とシリアスなテーマを持つ漫画)の影響を受け、1970年代に入ると成人向けの劇画、**「エロ劇画」「官能劇画」**が主流になります。
- 専門誌の創刊:1973年に日本初の官能劇画専門誌『エロトピア』が創刊されるなど、この種の作品を専門とする雑誌が多数登場しました。これらは「三流劇画誌」とも呼ばれ、表現の自由度が高く、当時の漫画界に影響を与えました。
3. 絵柄の多様化と「美少女コミック」の登場(1980年代):
- 表現の転換点:1980年代に入ると、劇画調から、よりアニメや一般漫画に近い美少女キャラクターを中心とした絵柄の作品が登場します。この流れは、吾妻ひでお氏の作品などが先駆けとされており、成人向け漫画の絵柄に大きな変化をもたらしました。
- 専門ジャンルの確立:「ロリコンコミック」といった特定の志向を持った専門誌も創刊され、現在の「美少女コミック」誌へと続く非劇画系の成人向け漫画の礎が築かれました。
4. 規制との攻防と表現の進化(1990年代以降):
- 規制問題との関連:この時期は、作品の内容や販売方法を巡る社会的な議論や、地方自治体の「有害コミック」指定、**「青少年健全育成条例」**などの表現規制の動きが活発になり、表現のあり方が常に問われることになります。
- 販売形態の変化:雑誌から単行本、そして近年では電子書籍へと、作品の流通形態も時代の流れとともに変化しています。
成人向け漫画の歴史は、日本の大衆文化における「性」の表現が、どのように時代や社会、法規制と折り合いをつけながら変化し、多様化してきたかを示す側面を秘めていると言えます。




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