コミックマーケット、通称「コミケ」は、自由な創作活動を支援する場ですが、その巨大な規模と公共性から、参加者全員が守るべき厳格なルールが存在します。特に成人向け(R18)作品の頒布(販売)に関しては、法令遵守と社会的な配慮が強く求められます。この二つの側面について、具体的なルールと制作の注意点を詳細に解説します。
※今回の記事はエロ漫画サイトを運営してる正行氏に書いていただきました。
📜コミックマーケットにおける基本的なルールと禁止事項
コミケのルールは、サークル参加者(出展者)、一般参加者(来場者)、そしてコスプレイヤーの全ての参加者を対象としていますが、根底にあるのは**「公序良俗の遵守」「表現の自由の尊重」「安全な運営への協力」**の三点です。サークル参加者が特に留意すべき主なルールは以下の通りです。
1. 頒布時間と運営協力の厳守
- 頒布開始時間の遵守: サークル受付が完了するまで、一切の頒布(販売)は禁止されています。開会前の頒布は認められません。
- 深夜来場・徹夜の禁止: 会場周辺の地域住民や交通機関への迷惑となる深夜の来場や徹夜行為、野営は厳しく禁止されています。これはコミケ運営の根幹に関わる重要なルールです。
- 周囲への配慮: 著しい騒音を出したり、危険な行為(物を振り回す、投げるなど)をしたりして、他の参加者や近隣に迷惑をかける行為は禁止されています。
2. 著作権・肖像権の遵守
- 無断利用の禁止: 既存のロゴマークや写真、キャラクターの公式イラストなどを無断で使用することは、知的所有権や肖像権の侵害となる可能性があります。特に頒布物(同人誌やグッズ)にこれらを使用する際には、権利者の許可が必要です。
- フリーコミックなどの利用: 著作権に配慮しつつ、オリジナルの創作物や二次創作物を発表することが求められます。
3. 責任の所在の明確化(奥付の義務付け)
頒布する全ての同人誌には、奥付(おくづけ)を必ず入れることが強く推奨されています。特に成人向け作品においては、奥付がないと、当局から**「何か隠すことがある」**と見なされ、ブラックマーケットとの関連を疑われるリスクが高まります。奥付には、最低限以下の情報を含めるべきです。
- 冊子のタイトル
- 発行年月日
- 発行者(サークル名または著者名)
- 発行者の連絡先(メールアドレスやサイトURLなど)
- 印刷会社名(任意ではあるが、入れることが推奨される)
社会に向けて表現活動を行うクリエイターとして、自分の作品に対する責任の所在を明確にすることは不可欠です。
🔞成人向け(R18)同人誌の制作と頒布に関する厳格なルール
成人向け作品を扱う場合、上記の基本ルールに加え、日本の法令(特に刑法175条「わいせつ図画頒布」)と、各都道府県の青少年健全育成条例を遵守するための極めて厳格な自主規制が求められます。
1. 頒布対象の制限と年齢確認の義務
- 18歳未満への頒布・閲覧の禁止: 成人向け作品は、いかなる理由があっても18歳未満の者への頒布(販売)、閲覧(立ち読み)を禁止します。
- 年齢確認の徹底: サークルは、購入希望者が18歳以上であることを、**公的な身分証明書(免許証など)**で確認する義務があります。口頭での確認や、見た目での判断は不十分と見なされます。
- 陳列時の配慮: 成人向け作品は、一般向け作品と分けて配置し、未成年者の目に不用意に触れないよう、ビニール梱包や内容が確認できないようにするなどの対策が必要です。また、机上には「R18」「成人向け」などの明確なポップ表示を設置しなければなりません。
2. 刑法175条「わいせつ図画」への対応(修正基準)
日本の刑法では「わいせつ図画」の頒布が禁止されており、コミケではこれに抵触する可能性のある描写を「ワイセツ図画」と見なし、厳格な修正を求めています。
- 修正の対象: 具体的には、**「性器の露骨な描写」および「結合部分の具体的な描写」**が主な修正対象となります。
- 修正の方法: 修正は、性器の輪郭や形状が特定できないように、**「線」ではなく「面」で行うことが強く推奨されます。具体的には、背後の絵が透けない黒ベタ(黒塗り)や白抜き(白塗り)**での修正が基本です。モザイクや細い線を複数並べる程度の修正は、不十分と見なされるリスクがあります。
- 目安は商業誌の基準: 修正の度合いについては、イベント直近に発売された成人向け商業誌の表現レベルを目安として、作者自身が責任を持って判断し、修正を行う必要があります。
3. 児童ポルノ法と青少年健全育成条例への対応
- 児童ポルノ法: マンガやアニメ、ゲームなどにおける想像上のキャラクターは、現在の法律では児童ポルノ法の直接的な対象ではありませんが、実写の写真、模写など、現実の人物を連想させる描写については細心の注意が必要です。実在の18歳未満を性的な対象とした作品は、法律に抵触する恐れがあります。
- 青少年条例への対応(ゾーニング): 表紙など目立つところに**「R18」「成人向」「成年向」「ADULT ONLY」といった成人マークを明確に記載することは、青少年健全育成条例に基づくゾーニング(区分け)**への自主的な対応となります。
サークル参加者は、自らの作品が持つ表現の自由を主張するためにも、これらの厳格なルールとガイドラインを深く理解し、遵守することが求められます。





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